舞台「ANOTHER 新たなる冒険」考察とかいろいろ
内容はすごく分かりやすかった。辻褄も合っていたし、見やすかった。
しかし何せ今まで意味不明な舞台ばかり見せられ続けたジャニオタ、ここに来てまあまあ分かる作品になったことに少し戸惑いもある。
安易にジャニーさんのトンチキが恋しいなどと言いたい訳ではない。
今までどれだけ訳が分からなくても、「おじいちゃんがそうしたかったんだろう」で片付ける事が出来た。ところで13月はどこにありましたか。
でももうその時代にとどまっている場合ではない。だからこそそれなりに辻褄の合った作品を見て、深掘りしておきたいところがいくつか出てきたので、そろそろちゃんと消化していこうと思った次第です。
↓以下全て独断と偏見
⚫︎船に乗り合わせていた少年たちの関係性
少年たちを乗せた船が嵐で遭難し、無人島に流されるところから物語が始まる訳ですが。
早速ですがそもそも子供だけで海に出たの?
「大阪にいる家族は俺らが生きてると思ってへんのやろな、墓立ってたりして」の台詞があったので、船に各々の家族が同乗していなかったことは明らかです。
賢くて冷静なトア、家族でもある親友と幼い弟を抱えたタクヤが揃っていながら、子供だけで海に出ようとするだろうか。きっとそれはない。
過去の同作品では「冒険旅行」とあったので今回もそうなのかな、じゃあその日偶然同じ船に乗り合わせただけの関係?でもそれにしてはお互いの事をよく知っている。
結論:たぶん前作までと同じく冒険旅行で、少年たちはその日偶然同じ船に乗っていた。そこで知り合い、それなりに親しくなった矢先での遭難だった。
⚫︎南の島に雪が降った理由
ANOTHER目玉シーンのひとつといえば、幼い弟の入水自殺シーンだと思います。
何故ここには雪が降らないのかを弟から問いかけられ、ここは日本よりずっと南にある島だから雪は降らないんだと答える兄。
また雪が見たいと言う弟に対し、日本に帰ったら家族みんなで雪を見に行こうと兄弟で約束します。それまで兄は何があっても生きて、弟を守り日本へ帰ると決意します。
しかしその約束は果たされませんでした。島での生活が限界に達した弟は、海に身を沈めてしまいます。
その時に弟が見た幻覚が母親と、そして雪でした。故郷の象徴である雪。
兄ちゃん!南の島なのに雪が降った!そう喜びながら、海へと進んでいく弟。
死にゆく美少年と雪、美しい。最高。
だがしかしこれは例年の設定。今年はガラリと変わっておりました。
まず最初に遭難した段階で兄が海へ転落。親友が必死に手を引くも、そのまま流されてしまいました。
まだ生きているかもしれないと信じながら島での生活を続けている弟に真実を伝えて別れを告げるため、兄が化けて(化けて言うな)弟のところに現れました。
一緒に行きたいと言う弟に対し最初は駄目だと拒否するけど、僕を置いていくん?と訴える弟に負けて結局連れて行ってしまった、という流れでした。
そう、何故かこのシーンでも例年通り雪がちらついていたのです。それまで雪の話が一切出てこなかったにも関わらず。
軽くググってみたのですが、雪が別れや死を象徴しているという訳でもないようです。ますます分からんやんけ。
もう一度よく思い出してみよう。
夜眠っている弟が、兄の声で目覚めて海岸まで呼び寄せられ、そこに兄の姿があった。
それなら兄の姿や雪の描写は弟が見た夢だった可能性もある。いや、実際海までは行ってる訳だから、夢と現実の間の曖昧な世界だろうか。
「故人」「雪」と夢の関係性について再びググりました。簡単にまとめると
・故人が夢に出てくる…故人の死を受け入れた
・雪が降る…純粋、純白な心
を意味しているようです。つまり、
兄がもう生きていないことは弟も分かっていた、それでもずっと一緒にいたいという真っ直ぐな気持ちが兄を動かした。そして弟を一緒にあちらの世界に連れて行くことを決意した。その象徴としての雪だった。
ということになるのでしょうか。こう考えたら例年とは真逆なんだな。
凄くこじつけた感はありますがひとまず解決したので次。
⚫︎トア父が家を出た真相
(実はここを整理するためにこの記事を作成しました。ここまで来るのが長すぎた)
幼いトアと母を置いて、父が生まれたばかりのルイを連れて家を出たのがおよそ10年前。
父からトアへ語られるその理由は
①広島被爆者の子孫に会い、原発事故の償いを果たしたいと思った
②トア母もまた広島被爆者の子孫であり、放射能の影響で発病したためトアとルイふたりを育てることが出来なかった
③トアには自分が被爆者の子孫という事実、そしていつ発病するか分からない恐怖を知らないまま生きて欲しかった
なんだかもっともらしく思えるけれど、全部合わない、家を出て行ったことと何もかも合わないよパパ。一応1つずつ考えていきましょう。
①:広島被爆者の子孫に会い、原発事故の償いを果たしたいと思った
原子力を人の命を奪う為ではなく、人々の生活を豊かにする為に使いたいという理由で原子力発電に関わる仕事に就いた父。
そこで事故を起こし、結果人々の命を奪ってしまった。
そんな時にある島の存在を知った。戦後すぐに広島での被爆者が差別から逃れて流れ着いた島で、今でも子孫がそこに暮らしているらしい。そう知って運命的なものを感じた。彼らに会って償おうと思った。
らしいのですが
本当に償いを果たすのなら、わざわざ遠い島まで行って自分の失敗とは直接関係がない被爆者の子孫たちに対して一体何をどうやって償おうと考えたのか?
償うべきは事故を起こしたその土地の人々に対してではないのか、わざわざ家を捨てて日本を出た理由とは。
②:母が発病し、ふたりの子供を育てられなくなった
トア母も、島の人たちと同じく被爆者の子孫でした。そして発病してしまった。
その状態でトアとルイふたりともを育てることは出来ないから、ルイだけを連れて家を出たという事でした。これも矛盾するよね。だったら尚更父は家に留まって、2人ともを育てるべきだったはず。
③:トア自身が被爆者の子孫であることを知らないまま生きて欲しかった
これも出て行く理由としてはよく分かりません。父が家を出ることとトアが真実を知ることは全く別の問題じゃないの?
これらの理由は結局、全て後付けのものでしかないのだと思います。
父が家を出た真相は、
「原発事故の失敗からその地域に居られなくなった」シンプルにこれだけではないでしょうか。
母が発病してしまったので一家皆を連れて行く訳もいかない、だからといって自分だけで逃げたとしても、母だけでは2人の子供を育てることが出来ない。
だからまだ物心が付いていないルイだけを連れて出た。
まさか数年後トアが同じ島まで流れ着いて再会するとは思っていなかっただろうから、もしかしたら成長したルイにいつか自分の生い立ちを聞かれる日が来たら、そう話そうと決めていたのかもしれません。
でも先に真実を確かめに来たのはトアだった。最初はとぼけて乗り切ろうとするけれど、もう誤魔化しきれれないほどにトアは成長していました。だからトア自身も被爆者の子孫であるという真実を伝えた。
個人的には真実を知って初めて死への恐怖を身近に感じるトアと、唯一家族と呼べる存在だった親友とその弟どちらも居なくなり、何で一緒に連れて行ってくれなかったんだと嘆きながら、それでも生きるしかないタクヤがとても残酷に対比していて涙が出ました。
⚫︎おわりに
本当に好き放題な考察になりましたが、これも脚本が分かりやすくなったからこそだと思っています。このメンバーでこの舞台を見られて本当に良かった。
改めてこんなご時世の中で舞台に立ち続けた関西Jr.のみんな、そして初座長を務めたLilかんさいの5人に心の底からありがとう。
船出から間もない新生関西Jr.、これからの活躍をとっても楽しみにしています。夢に見た楽園にきっと辿り着けるから!